永年、富士山は登る山ではなく見る山であるとの信念を持っていた。
特に、新幹線の富士川鉄橋あたりから見る富士山は、長く裾を引く姿は涙が出そうになるくらい好きである。
ところが、いろいろ故あり、富士登山をしてきた。
その結果は天候の悪さも相まって、長年の信念は変わらなかった。
今回は、アクセス、費用の観点から、ツアーに申し込んだ。
横浜駅に朝6時集合で、いったん新宿に向かう。
この時点ですでに、30人程度。
西新宿のセンタービル前が集合場所である。
すでにたくさんの登山客が群れている。とんでもない数である。
ガイドさんが、センタービルのエリアには入らないでくれと必死で訴える。
しかし、バスを待つ間に、沢山の登山客が歩道にあふれ、やっぱり警備員さんに叱られてしまった。
ずいぶんの人気ぶりである。
3台目のバスに乗せられた。
40人超のツアーグループである。
自分のようにガイドをお願いしないフリーツアー客は内約10人。
とりあえず定刻に、出発し、定刻と思われる時間くらいにスバルライン5合目に到着。
ところが、バスを降りた途端、想定外の事態に遭遇。
風が20m/s以上で吹き荒れており、むちゃくちゃ寒いのである。
フリーの客は解放されて、とりあえず登山道を歩み始める。
あたりは雲で覆われている。
三日月形の山中湖が心なしかぼんやりと見える。
ゆるやかな道を2km程度歩くと、6合目の安全指導センタに到着。
風が一段と強くなってきた。
幸いにも雨はまだだ。
道が本格的な山道になってきた。
同時に雨が本格的に降ってきた。
道がジグザグで、砂止めの壁が続く。
壁際を歩くと風よけになる。
時々、四足で踏ん張る必要があるほどの突風がくる。
これほど悲壮な雨のぼりは昨年の立山以来である。
http://chibira-tamy.blogspot.com/2017/09/blog-post.html
今回の違うところは、雨に砂粒が混じっていること。
顔を拭くと黒いものが混じる。
どれだけジグザグを繰り返しただろうか、やっと7合目の山小屋が見えてきた。
今日の目的地は、8合目の富士山ホテル。
岩だらけの登山道になった。
なめらかな岩肌だが濡れていても滑らない。
きついところは渋滞になる。
ヘロヘロになり始めているので助かる。
それにしても外人さんが多い。
日本語はほとんど聞こえてこない。
京都の嵐山並みである。
国籍では、たぶん中国が断トツであろう。
いやになり始めたころ、立派なトイレが目に入った。
気が付くとそこの脇が本日の目的地の富士山ホテルだった。
小屋につくと、タオルを渡され、カッパとザックカバーを拭き、渡されたビニール袋に入れるように指示される。これを寝床の頭上のフックにかけるのである。
寝床は、70cmくらいである。3年ほどの前の夏に泊まった北岳の肩の小屋約30cmよりましである。なんとかねられそう。
すぐに夕食に案内される。カレーライスにウィンナーソーセージが3個、小さ目のハンバーグが一個。それに300㏄の水が付く。質素な夕食である。一緒に明日の朝ごはんを渡される。
消灯時間の8時のはるか前に全員就寝。ガイドツアーの仲間は、いつついたかはわからず。
深い眠りにはつけずに頻繁に時計を見た。
2時になった。
ばらばらと人が動き始める。
頭が重いのが気になるが、ここまで来たのでと頑張ることにした。
幸いにも、雨は降っていない。
雲のあいだから富士吉田の町の灯が見え隠れする。
沢山の人(外人さん)がヘッドランプをつけて行列をなしている。
小屋の前も大渋滞。
あまりの多さにギクッとするがすぐになれる。
やはり、3000mを超えると息が苦しい。
400m程度の高低差だと軽く考えていたが、想定以上の時間がかかってしまう。
3時間ついやしてやっと頂上。
絵に見るご来光のイメージではないが、雲の向こうが赤くなり期待を持たせられたが、
日の出る方向はそっちでは無かった。
頂上は、強風が吹きすさぶ。時折、砂交じりの風が顔にぶち当たる。
口、目に入り気分が悪い。
驚いたことに頂上はどこかの観光地の雰囲気。
ペットボトル、割りばし、空き缶などが散乱している。
今までに見たことのない”山頂”の趣である。
正直がっかりであった。
剣ヶ峰を目指そうと思ったが、体が吹き飛ばされそうな強風。
それに砂の飛礫。
あきらめて、早々に下山を開始した。
このころには完全に晴れてきた。快晴である。
昨日と打って変わり、素晴らしい下界の風景である。
それにしても、下山用のルートの九十九折の長いこと。
日が照り十分に暑い。しかし、吹き抜ける風がそれを十分に補って余りある。
この登山は、ほとんど林間がないのである。
長い長い時間をかけて下ってきた。
たぶん、富士山に二度目に登ることはないであろう....
西新宿の集合場所。 歩道を占拠し、センタービルの警備員に叱られてしまった。 |
バスから見た今日の富士山。天気予報通りやばそうな雰囲気 |
スバルライン5合目。下界の服装をした観光客に冷たい強風が吹きすさぶ。 |
土産店の前は海外からの観光客でごった返す。 |
登山口の案内看板。たくさんの山小屋の位置が記されている。 |
スバルライン終点からしばらく緩やかな林道を歩く。 このころは、まだ雨はない。 |
山中湖が雲の下に |
これは、富士吉田の町並 |
これは河口湖方面 |
5合目安全指導センターに到着 |
ここから本格的な登り。頂上まで5km以上。 |
砂止めの柵が九十九折に続く。風が強いと柵に身を寄せる。 |
雨が近づいてきた。 昨年に懲りて、カメラを大判のZipLockに仕舞い込んで撮影中止。 |
朝焼けが始まったが、この方向では日は登らない・・・ |
振り返るとヘッドランプの列が延々と続く |
だいぶ明るくなってきた |
浅間大社奥ノ院に到着 |
ご来光を待ち望む登山客 |
頂上広場はごった返す。 |
おびただしい人が続々と・・・ |
こちらがご来光の方向。雲が厚い!! |
ご本堂。人がごった返しており、参拝もままならない。 |
何語かわからない言葉で標柱の周りで叫んでいる |
残念ながら雲が厚い。 |
下山開始。 今朝は暗くてわからなかったが、このような急こう配を折れ曲がりながら 頂上直下を目指して登ってゆく。 |
8合目の山小屋が見えてきた。 |
急峻な斜面の背景に、遠く八ヶ岳が見えてきた。 |
鳥居が9合目。その向こうに頂上の神社が見える。 |
下界はだんだん雲が取れてきた |
本八合の分岐に到着。 |
壮大な風景。ミクロにみると場所場所で個性が違う。 |
登りの吉田登山道方面。山小屋が点在する。道は岩の上を続く。 |
沢山の登山客がブル道を下りてくる。 |
荷物運びのブルがやってきた。 そこのけそこのけ・・・ |
よく見るとスイッチバックで登って行く。 この方が、ターンの時に路面が痛まない。 |
やっと帰着(9時10分)。 |
帰り際河口湖から望む富士。雲一つない! |